“This is our little secret, okay?”
エリス「この事は、内緒ですよ?」日本語版31ページ
日本で人気のライトノベルの中には、英訳版も出ているものもあります。
英訳ラノベは普通の洋書(ハリーポッターなど)と比べて、易しく読みやすいものが多いです。さらに、日本語版やアニメで内容を知っていれば、多少理解できなくても話についていけます。
そんなわけで、ラノベ・アニメ好きの人で、英語の本を読みはじめたい人にオススメです。
この記事は、そんな英訳ラノベで使われた単語や名場面などで英語の勉強をしよう!というコーナーです。分かりづらい文も説明します。
今回はこの素晴らしい世界に祝福を!2巻です。
なお、そこそこネタバレを含みます。
Konosuba: God’s Blessing on This Wonderful World!, Vol. 2 : Love, Witches & Other Delusions!

日本語サブタイトル:中二病でも魔女がしたい!
英語サブタイトル:Love, Witches & Other Delusions!
・Amazon
書籍版:英語版 日本語版
Kindle版:英語版 日本語版
日本語版:角川書店 角川スニーカー文庫
英語版:エン・プレス yen on
著者:暁なつめ
訳者:Kevin Steinbach(『幼女戦記』、『アウトブレイク・カンパニー』などの訳者)
ページ数:176
おすすめ度:★★★★★
あらすじ
「……金が欲しいっ!」もうすぐ迫る冬に馬小屋暮らしは辛すぎる。生活拠点の確保が急務だ。そんなカズマに「屋敷に住み込みで悪霊退治をして欲しい」と願ってもないチャンスが訪れるが……!?
紹介
人気作品『このすば』の2巻です。アニメ1期の7話から10話とアニメ2期の3話のエピソードを含みます。話数の都合でアニメ版ではカットされたエピソードも含まれているので、原作未読の方はぜひ読んでみてください。
単語・フレーズ編
第1章
Love, Witches & Other Delusions!(中二病でも魔女がしたい!)
(難)Delusion【名】妄想、思い込み
サブタイトルです。1巻のサブタイトルは『ああっ女神さまっ』のパロディでした。2巻はもちろん『中二病でも恋がしたい!』のパロディです。
『中二病でも恋がしたい!』の英訳タイトルは“Love, Chunibyo & Other Delusions”です。ちゃんと英訳でもパロディになっていることがわかりますね。
Delusionは妄想という意味ですが、かなり強烈な思い込みや、病的な妄想のことを指します。中二病は妄想が特徴ですね。
参考リンク
Chunibyo – Wikipedia
delusionの意味・使い方|英辞郎 on the WEB:アルク
Scot-free(お咎め無し)
登場ページ:日本語版9ページ
〈難〉Scot-free:お咎め無しで、罰を逃れて
1巻でアクアが街を守るためとはいえ、街の一部を破壊したせいで一行は莫大な借金を負うハメになりました。そのことに不満を漏らすアクアに対して、カズマがさすがにお咎め無しとは行かないのだろうと発言します。
Scot-freeのScotは、イギリスを構成する国の一つであるスコットランド(Scotland)とは関係ありません。古い英語で税金という意味です。このFreeは日本語でよく使われる「無料」という意味ではなく「~なし」という意味です。
参考リンク
What is the origin of the term ‘scot-free’? | OxfordWords blog
Crusader-cum-hardcore masochist(ドMクルセイダー)
登場ページ:日本語版11ページ
-cum-:(2つの名詞を繋いで)~兼…
Hardcore【形】徹底した、ハードコアな
Masochist【名】マゾヒスト
ダクネスさんの別名です。直訳すると「クルセイダー兼ドM」です。ドMはHardcore masochistと訳されていますが、日本で一般に軽く使われているドMという意味ではなく、なんというかその、ダクネスのような強烈な意味になります。
Terminally tweeny Arch-wizard(中二病を患ったアークウィザード)

登場ページ:日本語版11ページ
Terminally【副】末期的に
(〈大学受験〉Terminal【形】末期的な、最終的な【名】(駅などの)終点、末端、端末)
Tweeny【形】8~12歳の子供のような
めぐみんの別名です。
‘Terminally tweeny’では中二病を説明しきれていない感じもします。まあ、ここまで読んでいればめぐみんの特徴は分かるはずなので大丈夫でしょう。
Terminallyの形容詞・名詞形のTerminalは形容詞では「末期的な」「最終的な」といった意味で、名詞では「(駅などの)終点」という意味や「端末」という意味になります。
端末のことをターミナルと呼ぶこともありますね。昔は大きなコンピュータのような中心の装置の終端に小さな「端末」を繋いで使っていたので、こういう意味になります。
One-Punch Bear(一撃熊)
登場ページ:日本語版12ページ
掲示板に残っていた「ロクでもないクエスト」の討伐対象のモンスターです。英訳はおそらくワンパンマン(One-Punch Man)のパロディでしょう。
カズマはこのクエストのことを、論外(Out of question)と評しています。
ちなみに、もう1つの「ロクでもないクエスト」は白狼の群れ(A pack of white wolves)の討伐です。
General Winter(冬将軍)
登場ページ:日本語版21ページ
〈高校〉General【名】将軍
冬の精霊、冬将軍です。
現実世界において厳しい冬の寒さのことを指す「冬将軍」も、英語でGeneral Winterなどと呼びます。ところで、実は「冬将軍」は日本で生まれた言葉ではありません。
1812年、ナポレオン1世率いるフランス帝国軍のロシアに対する攻撃が、ロシアの冬の厳しい寒さにより失敗に終わったことを風刺した絵が由来だと言われています。
参考リンク
その風刺画(GENERAL FROST Shaveing Little BONEYと書かれている)
General Frost Shaveing Little Boney – Napoleonic Period Collection of Political Caricatures – University of Washington Digital Collections
Kowtow(叩頭、DOGEZA)
登場ページ:日本語版23ページ
Kowtow【名】叩頭、媚びへつらうこと
冬将軍は寛大なので、謝れば許してもらえます。そこでアクアはDOGEZAをし始めます。
DOGEZAは英語だと通じないので、英語のKowtowになっています。中国語の叩頭が由来です。
参考リンク
叩頭 – Wikipedia
Some local deity(辺境担当の女神)
登場ページ:日本語版30ページ
〈中学〉Local【形】地方の
〈難〉Deity【名】神、女神
女神エリス様を「日本担当のエリートな」アクアが罵倒したときの呼び方です。たかが一地方の女神が調子に乗るなというニュアンスでしょう。
中学校で先生にも言われたかもしれませんが、英語のLocalに「田舎」という意味はないので気をつけてください。英語で「田舎」はRuralです。
Intermediate Magic(中級魔法)
登場ページ:日本語版47ページ
〈大学受験〉Intermediate【形】中間の
なんやかんやあって、1日だけダスト(Dust)とパーティを代わったカズマ。
そのパーティのウィザード・リーン(Rin)は、中級魔法(Intermediate Magic)を使うことができます。
Wind Curtain(ウィンドカーテン)
登場ページ:日本語版59ページ
リーンが使用する風の防御魔法(wind defense magic)です。ゴブリンが放つ矢を防ぐために使われました。
「渦巻く風」(a whirlwind)を生成して、飛んでくる矢などから身を守る魔法のようです。
〈難〉Whirlwind【名】旋風、つむじ風
Beginner’s Bane(初心者殺し)
登場ページ:日本語版54ページ
〈難〉Bane【名】破滅、死、(死・破滅)のもと
ゴブリンやコボルトのような弱いモンスターを餌(Bait)にして、弱い冒険者を狩る狡猾なモンスター・初心者殺し。
「巨大な猫科の猛獣」(A huge catlike creature)のような見た目です。
〈中学〉Huge【形】巨大な
第2章
Kick the bucket(死ぬ)
I mean, I had kicked the bucket just the week before.
(なんせ、先週死んだばかりだ。)日本語版81ページ
Kick the bucket:(スラング)死ぬ、くたばる
先週死んだばかりだからと、キールのダンジョン(Khiel’s dungeon)の出現モンスターを念入りに調査したカズマ。
現実世界では、“Kick the bucket”の主語が‘I’になることはまずないでしょう。当たり前ですが。
さて「バケツを蹴る」が「死ぬ」という意味になる理由ですが、これには諸説あります。
有力な説は「人がバケツを蹴って首吊りするから」と「古い英語でBucketとは梁のことを指し、食用の豚を吊るしてと殺するときに豚が苦しんでBucketを蹴るから」の2つです。
参考リンク
‘Kick the bucket’ – the meaning and origin of this phrase
The goddess of debt(借金の女神)
登場ページ:日本語版82ページ
〈高校〉Debt【名】借金
私が誰なのか言ってみなさいとカズマに要求するアクアに対して、カズマはこう答えます。
The notorious spell-caster(悪い魔法使い)
“I am Khiel. The notorious spell-caster who created this dungeon and kidnapped the nobleman’s daughter.”
(私はキール。このダンジョンを造り、貴族の令嬢をさらって行った、悪い魔法使いさ)日本語版96ページ
〈やや難〉Notorious【形】悪名高い
〈中学〉Create【動】創造する
〈大学受験〉Kidnap【動】誘拐する
Nobleman【名】貴族
(〈高校〉Noble【名】貴族)
〈中学〉Daughter【名】娘
ダンジョンを造ったリッチーのキールです。元は高名なアークウィザードでしたが、深手を負ったとき、お嬢様を守るため人間をやめてリッチーになりました。(abandon his humanity and become a Lich.)
Unnaturally busty goddess named Eris(不自然に胸のふくらんだ女神)
Unnaturally【副】不自然に
Busty【形】胸の豊かな
Goddess【名】女神
〈中学〉Named:~という名前の(動詞Nameの過去分詞)
アクアがキールを浄化する前に伝えた話の中で、エリスをこう呼びました。パッド入りです。
第3章
There’re a lot of crazy people in the Axis Church.(アクシズ教団の人は頭のおかしい人が多い)
“N-no, it’s… There’re a lot of crazy people in the Axis Church.”
ウィズ「い、いえその……。アクシズ教団の人は頭のおかしい人が多く、(略)」
日本語版115ページ
〈高校〉Crazy【形】頭がおかしい
日本語でも強烈なフレーズですが、英訳のほうもなかなかキレがあると思います。
The nobleman’s bastard daughter(貴族の隠し子)
登場ページ:日本語版132ページ
〈難〉Bastard【名】私生児(婚姻関係にない関係の間で生まれた子供のこと。この使い方は古く、今使うとかなり侮辱的な意味になる)
屋敷には、貴族が遊びで手を出したメイドとの間にできた子供の霊が住み着いています。名前は「アンナ=フィランテ=エステロイド」(Anna Filante Estroid)です。
このフレーズは、アクアが大事にしていたお酒を野良幽霊(Feral ghosts)か貴族の隠し子の地縛霊に飲まれたと主張しているときに出てきます。
現代でBastardを私生児という意味で使うと、かなり侮辱的になるようです。このすば世界が中世だから、この語を使ったのでしょうか。もしくは、お酒を飲まれた怒りでBastardとけなしているのでしょうか。
このBastardはスラングで「嫌なやつ」「クソ野郎」といった意味にもなります。こちらのほうが見かける頻度は高いでしょう。また、単に「あいつ」程度の意味でも使われます。
うにだよはちょっとしか見たことがないですが、アメリカのアニメ『サウスパーク』(とてもお下品な社会風刺アニメ)では“Oh my god! They killed Kenny!”“You bastard!”(なんてこった!ケニーが殺されちゃった!)(この人でなし!)というセリフが非常に頻繁に出てきます。
〈難〉Feral【形】野生の
Some very specific business establishments(特殊なお店)
登場ページ:日本語版134ページ
〈高校〉Specific【形】特定の、明確な
〈中学〉Business【名】店
〈高校〉Establishment【名】施設
夜中に目が覚めトイレに行こうとするも、なぜか体が動かないカズマ。大人になってからやらかしても良いのは「特殊なお店の中」か「お爺ちゃん」だけだそうです。
You’ll blow this whole house to Kingdom Come!(この屋敷ごと吹き飛ばす気かっ!)
“You’ll blow this whole house to Kingdom Come!”
カズマ「この屋敷ごと吹き飛ばす気かっ!」
日本語版145ページ
blow something to Kingdom Come:(何かを爆破して)完全に破壊する
恐怖のあまりエクスプロージョンの詠唱を始めためぐみんを、静止するカズマのセリフ。
エクスプロージョンは「(何かを爆破して)完全に破壊する」という意味にぴったりでしょう。
Kingdom Comeは新約聖書の祈祷文(The Load’s Prayer、主の祈り)にあるフレーズだそうで、これが転じて「天国」「あの世」などといった意味になったようです。
blow someone to Kingdom Comeだと、誰かを殺すという意味になります。
第4章
Put the moves on(言い寄る、口説く)
登場ページ:日本語版165ページ
Put the moves on:言い寄る、ナンパする、口説く
ダストはリーンにちょっかいを掛けた結果、トラウマを負うことになりました。この「ちょっかい」は”Put the moves on Rin”となっています。
I’ll kill you!(ぶっ殺してやるっ!)
登場ページ:日本語版194ページ
ダクネスの名セリフですね。英訳もかなりストレートです。
第5章
Mobile Fortress Destroyer(機動要塞デストロイヤー)
“Mobile Fortress Destroyer is a colossal golem initially developed by the country of Noise, a world leader in magic technology, as a weapon to be used against the Demon King’s army.”
「機動要塞デストロイヤーは、元々は対魔王軍用の兵器として、魔導技術大国ノイズで造られた、超大型のゴーレムの事です。」
〈大学受験〉Mobile【形】動ける、機動性のある
〈やや難〉Colossal【形】巨大な、とてつもなく大きい
Initially【副】初めは、最初のうちは
(〈高校〉Initial【形】初めの、最初の)
〈中学〉Develop【動】開発する、発達させる
暴走兵器・デストロイヤーです。通った後はアクシズ教徒以外草も残らないと言われています。
文法編
カズマ、キレる(知覚動詞)
I’ve been just listening to you spew BS all this time―
カズマ「さっきから黙って聞いてりゃ舐めた事ばっか抜かしやがって!」
日本語版43ページ
〈難〉spew【動】吐き出す
BS:Bullshitの略
Bullshit【名】でたらめ、たわ言
all this time:今まで
カズマがダストのパーティに「上級職の女だらけのパーティでいい思いしやがって」と挑発され耐えるも、ある一言で我慢の限界に達したカズマのセリフ。
BSはBullshitの略で、「でたらめ」や「たわ言」という意味のスラングです。ネイティブは結構よく使います。直訳すると「牛のクソ」で非常に下品なので、BSと略して使われることもあります。それでも下品ですが。
さてこの文ですが、“I’ve been just listening to”は現在完了進行形です。これはいいでしょう。しかし、この後に“you spew”という名詞と動詞の原型が来ていて、なんだか変な感じです。
ここで思い出してほしいのは、“listen to”はいわゆる知覚動詞だということです。知覚動詞では目的語の後に動詞の原形を置くことで、~が…するのを知覚するという意味になるんでしたね。

この文では、“have been (just) listening to”が「知覚動詞」、youが「目的語」、spewが「動詞の原形」、BSが「spewの目的語」になります。
ということで、直訳すると「今まで、お前がでたらめ吐くのをただ聞いていた。」という意味になります。
(BSはBullshitの略ですって言いたかっただけなのに、知覚動詞の説明をすることになるとは思わなかった)
アクアの知力(No matter how ~)
That means no matter how high her level gets, her Intelligence will never go up!
――つまりこいつはどれだけレベルを上げても、これ以上知力が上がらない訳だ。
日本語版158ページ
no matter how 形容詞or副詞 SV:どんなに~でも
悲しいことに気づいてしまったカズマ。
That means ~は直訳すると「それは~ということを意味する」ですから「つまり」という意味ですね。
No matter how high her level getsは「どんなにレベルが高くなっても」という意味です。
No matter 疑問詞 ~で、「たとえ○○が(で)~でも」という意味になります。「疑問詞+ever」の複合関係詞を使っても同じ意味になります。
No matter which ~「どれが~でも」(=Whichever ~)
No matter where ~「どこで~でも」(=Wherever ~)
No matter when ~「いつ~でも」(=Whenever ~)
No matter why ~「なぜ~でも」(=Whyever ~だが、使われているのを見たことがないし、アメリカの辞書にもほぼ載っていないらしい)
No matter how ~「どんなに~でも」(=However ~)
まとめ

・Amazon
書籍版:英語版 日本語版
Kindle版:英語版 日本語版
とてもおもしろいラノベです。このすばはそれほど難しくないので、英語とラノベが好きな方はぜひチャレンジしてみてください。